高周波信号をプリント基板パターンに通すと多少なりとも波形がなまってしまいます。
その現象を起こす理由の主なものとして、誘電損失と表皮効果があります。
今回は、誘電損失について説明していきます。
プリント基板の絶縁体に使われるコア材やプリプレグ材は、紙やガラスを原料としてエポキシなどで固めたもので、構造や材質によって CEM-3, FR-1, FR-4 などと呼ばれます。
それら絶縁体の電気的特性には、比誘電率と誘電正接というものがあります。
誘電率は分極の強弱を示す値で、言い換えればコンデンサ成分になる特性の大きさを表しています。
比誘電率は、真空の誘電率との比率を表し、数値が大きい方がコンデンサ成分が大きくなります。
絶縁体を通して信号配線とGNDの間にこのコンデンサ成分が入る関係になるので、比誘電率が大きいと配線に高周波信号が通りにくくなって信号がなまってしまいます。
誘電正接とは、誘電体に交流電場が加わった時に誘電体の中で電気エネルギーの一部が熱になって損失する程度を表します。
交流電場の周波数が高いほど影響を大きく受けるので、これも配線に高周波信号が通りにくくなって信号がなまってしまいます。
こちらの誘電正接による損失の方を一般的には誘電損失と言います。
比誘電率は通常基板で 4.3程度で、小さいほど高周波特性が良い絶縁体です。
誘電正接は通常基板で 0.018程度で、小さいほど高周波特性が良く tanδ(タンジェント・デルタ)と呼ぶ事があります。
GHzレベルの高周波信号をプリント基板パターンに通す場合は、以前に説明したインピーダンスコントロールでインピーダンスマッチングをして反射信号を抑制する事はもちろんですが、基板の絶縁体材料による信号劣化を抑えるために低誘電率で低誘電正接の基板材料を選択する場合もあります。
次回は、表皮効果について