電気信号を伝送する信号線の構成にはシングル・バス・差動などの種類があります。
シングルは普通の一本の線で一つの信号を送ります。
バスはシングル線が複数本まとまっているもので、8本・16本など bit数分の本数を使って伝送します。
大容量のデータを伝送するためにはシングル伝送ではクロックを高速にするしかなく限界がありましたが、バス伝送でバス本数を増やして大容量伝送に対応してきました。
しかし、バス本数が増えてくると基板の配線エリアを多く使う事やクロストーク問題・配線間スキュー・同時スイッチングノイズなど、いろいろな課題が増えてきました。
差動信号伝送は2本の信号線を使ってお互いの逆位相信号を送る方式です。
2本の信号の電圧の差を受信側で作ることで2倍の電圧振幅が得られるため、伝送する電圧が半分で済む事になります。
また、2本の伝送線路に同じノイズが乗ってしまった場合でも受信側で差電圧を作ることでノイズが相殺されるので、外来ノイズにとても強い信号方式と言うことになります。
外来ノイズに強い事から電圧振幅をさらに小さくしても問題なく伝送できるため、0.3Vp-p程度の非常に小さな電圧振幅で伝送する方式もあり消費電力がかなり小さくできます。
差動信号伝送は逆位相の2本の信号が結合して併走しているため、磁束が打ち消されてコモンモードノイズも小さく信号振幅も小さいことから EMIノイズ低減に大きな効果のある伝送方式になっていて高周波信号伝送に適しています。
プリント基板に差動信号を配線する場合は、2本の配線を等長配線して差動インピーダンスコントロールするのが普通です。
通常の差動信号は差動100Ωですが、信号フォーマットによっては 90Ωや 110Ωなどのインピーダンス値があります。
数百MHz後半~GHzの超高速信号になると、2本の配線の信号位相を気にした配線が望まれます。
配線で遅延した信号位相がパターン上のポイントポイントでずれていると、ずれている瞬間だけは差動信号ではなくなっている事になるので信号の劣化につながります。
2本の配線が直線であれば何も問題ありませんが、曲がらなければならない場合(超高速信号では曲がる場合にアールをつける)には内輪差が生じてしまうために内輪差を吸収するための工夫をパターンに施して是正します。
また、差動信号に限りませんが、ビアの特性やビアスタブが信号特性を悪化させるので出来るだけビアを通さない配線ができるように配置配線を考慮する必要があります。
ビアを通さなくてはならない場合はスタブが形成されないように表層から逆の表層への配線にとどめるようにするのが良いです。
差動信号は他の信号に電気的結合をしないほうが良いため、隣接信号に対して十分なクリアランス(差動配線2本間の2倍以上)を確保すると良い配線になります。
隣接信号とのクロストーク防止のために GNDガードを入れる人がいますが、GNDとも結合しない方が良いので不要だと思われます。
差動信号を使った代表的な信号方式には USB, SATA, PCI-Express, IEEE1394, HDMI などがあります。