スイッチング電源の設計を行う際にコンデンサの選定、特に出力段側は設計者を悩ませるものです。
確かに計算で必要となる容量やESRが出てきます。
また、スイッチング電源の制御ICのリファレンス回路やツールで目安を示してくれます。
しかし、実際に回路検証してみるとコンデンサの容量が倍必要で有ったり、リファレンス通り作るとスペースや予算をオーバーしたりします。
そんな時に思い出して欲しい話をしたいと思います。
①コンデンサの種類
出力段のコンデンサとして下記4種類が使われます。
・アルミ電解コンデンサ
・タンタル電解コンデンサ
・導電性高分子コンデンサ
・セラミックコンデンサ
a)セラミックコンデンサ
高誘電率系の大容量化とスイッチング周波数高速化でよく使われる様になりました。
12V以下で且つ出力電流3A以下の場合はセラコンに絞って検討して良いでしょう。
スイッチング電源のコンデンサで求められるのは、高リプル電流で低ESRな特性です。
高誘電率系セラコンはベストな選択と言えます。
ただし、12V以上の電圧を扱う若しくは3A以上出力電流の時は、高耐圧&高容量な特性が求められます。
幾ら積層技術が進歩しても高耐圧化&高容量化が難しいのは変わりなく、主役は他のコンデンサに譲りサポートに回ります。
b)アルミ電解コンデンサ
アルミ電解コンデンサはあみだクジの様な製品体系を持ちます。
スイッチング電源の設計時に初めてこの製品体系を知った方も多いと思います。
この製品体系で、標準品から広温度化・長寿命化へ2ランク以上アップし、更に低インピーダンス化へ2ランクアップ以上のものを選びます。
[シリーズによる特性の変化例]
標準品
温度,寿命 85℃,2000h
リプル電流 80mArms程度
インピーダンス 5Ω程度
ランクアップ品
温度,寿命 105℃,5000h
リプル電流 400mArms程度
インピーダンス 0.5Ω程度
c)タンタル電解コンデンサ
高誘電率系セラコンや導電性高分子コンデンサの台頭と以前にあった供給不安で影が薄くなっていますが、スイッチング電源用途としては優れた特性と寿命を持ちます。
なお、短絡の故障モードが嫌われますが、スイッチング電源の場合同じく短絡の故障モードを持つダイオードも並行に使いますので、タンタル電解コンデンサの有無に関わらず短絡保護は必要になります。
d)導電性高分子コンデンサ
ケミコンと呼ばれるコンデンサは、酸化皮膜を付けた陽極と陰極の間を電解質で満たします。
アルミ電解コンデンサは電解質に電解液を使用しますが、導電性高分子コンデンサは導電性高分子を使用します。
そうすることでセラコンには及ばないもののアルミ電解コンデンサやタンタル電解コンデンサを遥かに上回る特性と、セラコンでは実現不可能な高耐圧・高容量を得られます。
スイッチング電源用コンデンサとしては最良の選択肢ですが、高コストなのが玉にきずです。
②コンデンサの選定のコツ・特性がパケージに依存する。
高リプル電流で低ESRな特性は、電流の交流成分の流れやすさと充放電が抵抗無く行われるかを示すパラメーターです。
コンデンサの構造と電極の広さで決まるため同じパッケージなら容量や耐圧に依らず、ほぼ同じになります。
例)330μF/16Vと100μF/35Vのコンデンサは、
同シリーズなら同じΦ8mm x 高さ10mmなので平滑能力は等しい
電極の広さや電解質の量の影響は大きく、コンデンサの特性に関して言えば”大きいことは良いことだ”です。
・アルミ電解コンデンサの標準品はご法度
低ESRで無いケミコンは、高ESRと言えます。リプル電流を流し続けると、アルミ電解コンデンサ自体(電解液)が発熱します。アルミ電解コンデンサはこの自己発熱で極端に劣化が進行するため、自己発熱は3℃以下に抑えて使います。高ESRほど自己発熱が大きく、スイッチング電源の電流の満ち干きの影響範囲内に、標準品のアルミ電解コンデンサが有ると発熱し急激に劣化して液漏れ等の故障に至ります。
・突入電流に注意
大量のセラコンや複数の導電性高分子コンデンサのリプル電流は数10Aに達します。
入力段の電源が持つ過電流や低電圧の保護回路が動作しかねません。
本当にそこまでの性能が必要なのか吟味し、
シーケンスを工夫しましょう。
次回は、効率アップのコツです。