設計者の誰もが関心があって、とても奥の深いテーマです。
これからスイッチング電源に挑む方には導入として、設計経験が豊富な方には昔話として読んで頂ければ幸いです。
●効率95%の持つ意味
私がまだ駆け出しの回路設計者だった時代(20年近く前)、5Vから3.3Vを5A出力する降圧型スイッチング電源の効率は80%ちょっとでした。
現在では効率95%ほどの物が作れます。
実は、この15%の違いは大変なインパクトがあります。
[Vin=5V入力でVout=3.3V,Iout=5Aを出力する場合]
@効率 80%
入力電力 20.6W 出力電力 16.5W → 損失 4.1W
@効率 95%
入力電力 17.4W 出力電力 16.5W → 損失 0.9W
この損失の全てが熱になるわけではないのですが、効率80%の場合3Wを超える発熱は覚悟しなくてはいけません。
3Wの放熱をするためにはそこそこの大きさのヒートシンクを付け強制空冷が必要になります。
この時点でタブレット端末などは夢になってしまいます。(タブレット端末は25Whの容量を持つ電池を持ち、同しクラスのスイッチング電源を内蔵している。)
ここからは効率95%への軌跡をたどります。
●受動部品の進化
効率80%の回路では、スイッチング部以外でも全体として発熱していました。
入出力段のコンデンサは充放電時のESRにより、チョークコイルは銅損により発熱がありました。
前回お話しした様に、アルミ電解コンデンサは着々と低ESR化し、高分子電解コンデンサや大容量セラコンが登場しました。
チョークコイルも素材,構造両面で進化しました。
外見には進化の見えにくい受動部品ですが、古い回路を使い回すと損をします。
●パワーMOS FETの爆発的進化
スイッチング部はパワートランジスタからパワーMOS FETに変わりました。
パワーMOS FETが駆動方法で効率アップに有利なのは確かですが、その低オン抵抗化には目を見張るものがあります。
パワーMOS FETは世代交代の非常に激しいデバイスです。
次回は”効率アップのコツ”の第二回です。
進化したFETをどう使えば効率が改善出来るかを見ていきます。