ある製品でEMS障害が発生し、調査編で説明した初期調査が終わったら、外来ノイズの正体を付きとめ、再現させます。
●再現とは?
外来ノイズは電気です。
その場に電荷がとどまることはありませんので、初期調査の情報から外来ノイズの種類,強さを推理します。
そして、外来ノイズの発生方法に当たりを付け、そのノイズで同じ障害が起きるか検証します。
再現が出来たら、外来ノイズと発生環境に矛盾が無ければ再現完了となります。
●破壊の伴う障害
EMS障害の内、破壊の伴う時の再現は比較的容易です。
ただし、緊急性は非常に高いと言えますので、スピード重視で再現させます。
故障した部品を特定し、EMS障害の痕跡(短絡など電気的な異常,焦げ跡)や故障解析を進めす。
●痕跡は明確だが故障状況=故障原因で無いことを常に頭入れて検証します。
例えば、故障したIC内部を調査した結果、内蔵していた4kV静電気対策用ダイオードが導通破壊してグランドと短絡していたとします。
状況的には外部に15kV静電気対策用ダイオードを付けて強化したくなりますが、少し考えましょう。
まず考えることは、4kV静電気対策用ダイオードが何故壊れたかです。
① 4kVを超える静電気があった。
② 負電圧を伴う外来ノイズがあった。
③ 定格を超える電圧が印加された。
静電気対策用ダイオードは、静電気の様な単発のサージノイズからICを守ってくれますが、電荷量が多いサージノイズや連続するバーストノイズにさらされると吸収しきれず壊れます。
従って、ノイズのモデルが本当に”静電気だったか”から入ります。
静電気だったとして、なぜ4kV越えの静電気が入ったかを考える必要があります。
明確な静電気侵入ルートが分からない場合、他も同様の破壊が起こるとみなし、基板全体の静電気対策を1ランク上げる必要が生じます。
明確な静電気侵入ルートが分かっても、再現実験でその静電気対策レベルを確認する必要があります。
次回は、痕跡の残っていない場合の対応を見て行きます。