【クロストークを抑え、誤動作を起こさないために】
今回は、プリント基板を設計・製作する上で、誤動作の原因となるクロストークについてお伝えいたします。このクロストークをいかに抑えるように設計するかが、開発リードタイムを削減し、さらに信頼性の高いプリント基板を作ることに繋がります。
<クロストークとは>
まずクロストークについてご説明すると、プリント基板上では複数の信号線が複雑に配線されていますが、並行する信号線では相互に電磁的に結合しやすく、一方の導体線に電圧を加えると、隣接する導体ラインに電圧が誘起され、ノイズが発生します。これを「クロストーク」といいます。
このクロストークが発生しやすい例としては、たとえば、ある信号線に対して必要以上に長く配線をした信号線が並行して配線されているとします。そうすると磁界が相互に結合しやすくなり、その結果ノイズが発生し、誤作動の原因となる、という訳です。
こうしたクロストークによる誤動作は、高密度配線の場合、信号線の間隔が小さくなると、特に著しくなるので注意が必要です。
<設計段階で、クロストークを抑えるためには?>
クロストークによる誤動作を抑えるための有効な対策としては、
・導体間隔を大きくする
・グラウンドとの間隔を小さくする
などが挙げられます。しかし、高密度配線では導体間隔を大きくすることは困難なケースが多く、GNDとの間隔の減少も特性インピーダンス整合で自由に行なうことはできません。
では、高密度実装は手がないの?と思われたかも知れませんが、そうではありません。クロストークは、
次に紹介する「配線の技法」によって解決することが可能です。
・16bitの信号線は4bit,8bit毎にGNDガードを行う
<クロストークを抑制するには、設計以外の対策も重要>
ここまで交流特性の観点から、クロストークを設計段階でいかに抑えるか?ということをお伝えしてきましたが、実は、クロストークはこれだけでは完全に抑え込むことができません。
次にご紹介する、プリント基板の機械的特性もクロストークに大きく影響してくるのです。経年変化や使用環境によっては、下記のような基板の症状が発生することで、特性が乱れる可能性があります。
・湾曲・ひずみ
プリント基板には多くの部品が搭載されますが、部品の種類のよって重さが異なります。これらのバランスが悪くなるとプリント基板にひずみが生じるため、実装・搭載してもゆがまないようにするために、部品の配置を最適化したりすることが必要です。
・そり、ねじれ
プリント基板が平坦ではなくそりやねじれがあると、接続端子がパッドに接触しない可能性があり、はんだ不良の原因となります。そのため、できるだけそりやねじれがなく平坦であることが重要です。
・熱膨張係数
銅と樹脂の熱膨張係数は大きく異なります。
そのため、プリント基板の使用環境温度が広範囲である場合、この熱膨張係数の差によって歪みが生じ、クロストークが起こりえます。
こうしたプリント基板の熱膨張係数の差を埋めるための対策としては、生基板の設計・製造段階において、基板材料の強度アップや仕向地に合わせた部材の選択等の対策を施すことで抑えることが可能です。
<クロストークを抑えるには、統合的な対策が必須>
ここまでクロストークを
①プリント基板の設計段階でいかに抑えるかという「配線の方法」という点と、
②プリント基板のどういった機械的特性がクロストークに影響を及ぼすのかという、
二つの側面からお伝えしました。
プリント基板の開発・設計に従事されている方々は、ほとんどの方はいかに計画通りに立ち上げるか?がミッションだと思いますが、やはりトライアンドエラーを行っていては時間がいくらあっても足りません。
事前に様々な側面からトラブル発生の要因を検証するためのDRを行うことが、
最終的にはクロストークによる誤動作がないプリント基板を作ることに繋がるのです。